セールに現れた千手観音
「仕込み=本を移動させる。
ならば、
仕込みをしているせどらー=座敷わらしと同じでは?」
というコメントをいただきました。
こんばんは、せぐっちママです。
うーん、確かに仕込みって言ったら、
何かしらの細工をするというイメージよね。
この読者さんが、
そんな風に思ってしまうのは仕方ないと思いました。
「ゴメンナサイ」
私の説明不足ですね。
私の行動範囲のブックオフに、
セール前日の夕方に行くと、
もっと速い時間に来店して、
既に本を移動してあったりします。
セール当日に自分が取りやすいように、
棚の端はしにまとめていたり、
作者名などの仕切り板をよそから持ってきて、
差し込んでみたり・・・。
極々、少数ではありますが、
毎回いるというのも事実です。
が!
私の知るほとんどのせどらーさん達、
特に閉店の時間まで頑張っている人達は、
みーんな、そんなことしません。
みんなそれぞれ、
セール当日に買う本をリストアップする時は、
必ず元の位置に戻してくれます。
中には他の人がバーコードを読み取った後、
乱れに乱れた本をキレイに整理してくれる人もいます。
それは、もう、見事な陳列っぷりです。
そうやって、リストアップした本を、
それぞれのやり方で本の位置をメモしています。
ケータイに記憶させてプリントアウトしてくる人、
棚の図を描いて位置を書き込んでいる人、
ムービー撮って家で覚えてくる人など色々です。
みんなそれぞれ、その本屋さんはもちろん、
他のせどらーさん達との関係を悪くはしたくないので、
一般のお客さん、店員さん、せどらーさんに、
少しでも迷惑をかけないように、
頑張っている人が多いのですよ。
以前、私とせぐっちがまだ新米だった頃、
仕込みの仕方を変えるきっかけを
与えてくれたせどらーさんがいました。
ここからは、
そのせどらーさんの話をしたいと思います。
その日は、前日にリストアップしたメモ帳を片手に、
都内のブックオフセールに開店前から並びました。
既に前の方には前日仕込みに来ていた人たちが、
ずらーーーっと、並んでいました。
私たちのようにメモ帳を持っている人、
プリントアウトしたリストを持っている人、
ケータイを見ている人。
そんな中、何も手にしていない男性が数人・・・。
「一般のお客さんかなぁー?こんなに早く。」
って不思議に思いましたが、
よくよく考えてみると、
「昨日もいた人だぁ!」なんて思っているうちに、
開店ーーーーー!!
私はメモ帳を見ながら取れる本を探していると、
数本の手が背後から「ヒュッ、ヒュッ」・・・。
振り向いてみると、さっきの男性。
「ん?一人だけ?!」
「今2、3本の手が見えたような・・・(・_・;)」
「ちがう!両手で取っているんだ!!」
そう、その男性はメモやリストなど持たず、
両手で本を取っていくのです。
「頭に入っているんだ!」
全て頭に記憶しているのです。
数百冊の本をすべて。
メモやリストを見ることなく、
両手で取っていくのですから、
すさまじい速さです(@_@)
次々に出てくる手になんの抵抗も出来ず、
勝てるわけもなく・・・。
私がリストアップしてきた本は、
ほんとんど、その人に取られてしまいました。
無力感・・・、
圧倒的な敗北感・・・。
千手観音・・・、
そう、千手観音を相手にしているようでした。
「くやしい。。。」
「どうして。。。」
考えれば考えるほど、
自分の無力さを思い知るばかりでした。
「甘かった。」
リストアップしたから、
自分のモノっていうわけではなかった。
前日にリストアップした本は何人ものせどらーさんと、
争わなくてはならないことを忘れていたのです。
その千手観音さんはリストアップするだけではなく、
人より努力して、家に帰ってからも本の位置、タイトルを
徹底的に頭にぶち込んできているのです。
「勝てるわけがない!」
私とせぐっちは、
その男性に感動してしまいました。
覚えたって、隠されたり、
移動されたりしてしまうかもしれないのに。
それでも、他人に迷惑をかけることなく、
正当な方法で、ここまで圧倒してしまう・・・。
「かっこい~~~っ!」
「クールじゃん!!」
この日以来、
私とせぐっちの仕込みの方法は、
ただメモを取るだけではなく、
この千手観音さんのように、人から見て、
「かっこいーーー」と思われることを目標に、
頑張っていこうと誓ったのでありました。
あれから、半年・・・。
千手観音さんと出会ったおかげです。
他のせどらーさんとの争いの中、揉まれながらも、
今では2~300冊の本を、
仕入れられるまでになりました。
PS
千手観音さん、今頃どうしてるんだろ?
最近私たちは都心方面に行かないものだから、
全然、会ってないのですヨ。
「俺、その千手観音知ってるぜ」、
「俺の方がもっとクールだぜ」、
「もっとスゲー奴見たことある」、
って方は、
どうぞ気軽にメールくださいね。
最近のコメント